ひえコラム 8

あそこ


あそこのアレは美味しいとか
あそこに行ってアレを食べたとか
自分の思っていることが言葉にならない時
人は「あそこ」や「アレ」といった便利な言葉を用いる。

私の知人にも、その名手がいる。
現在では、会社を経営し、いわゆる社長さんである。
過日、その彼の会社の経費でなんとかタダ酒が飲めないものかと
彼の会社の会議室で、昔の彼の悪事をネタに ゆすっている最中の出来事だった。

突然のノックとともに社員が入室し、なにやら社長の北別府と話し始めた。
よくはわからんが北別府が社員を怒り始めた、どうやらその社員がお客を怒らせたらしい。彼は昔から話が長い、そして、今、目の前で説教をしているが、それもまた長い。話が何度もふりだしに戻る。
こいつも変わってねぇ〜な、そう思った矢先。
彼が使ってはいけない場面で「あそこ」を使ってしまった。
「お前、自分の胸に手をあてて考えてみろよ」と言いたかったのだろう
しかし、彼は「胸」という言葉が出てこなかったようだ。
「お前、自分のあそこに手をあてて考えてみろよ」と言ってしまった。
社員は一瞬、何故?という表情を浮かべたが、社長の命令に従って自分の股間に手をあて考え始めた。
なんと従順な社員であろうか、こんな社員がいる限り北別府の会社の前途は明るい。



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