ひえコラム 7

キャスティング


知人が引越をした。
知人:太郎(仮名)とする。
お約束の流れで新居にてホームパーティーが催された。
また、いつものメンバーでダラダラと飲み食いするのだろうと考えていたが、なんと当日のメンバーは太郎以外全て初対面の人だった。後で知ったのだ が、参加者6人は全てが、私と同じであった。自分以外は初対面だった。この面子でテーブルを囲んだが、話がはずむわけがなかった。見かねた太郎君が 「どうしたの?今日はみんな大人しいね」と私達に笑顔を振りまいていたが、皆、口にこそしないが「当たり前だろ」と思っていたに違いない。
あまりにもつまらなかったので、太郎の愛猫セバスと遊んで時間をつぶすことにした。全身黒のせいか、私の目には狂暴に映った。太郎が言うには、 人懐っこく、人様に爪をたてたことは、一度もないらしい。しかし、私の手には、今もかさぶたが残っている。一旦、爪で私の手を引っかけて、口に運んで、がぶりとされた。飼主が一部始終を見ていたので「大丈夫」と強がったが、飼主がいなかったらこの猫はその場で星になっていたであろう。
手に傷を負った私は、再び、テーブルに戻った。依然、盛り上がってはおらず。私の座っていた席に遅れて来た外人が座っていた。当然、面識はない。もう、訳が分からなくなってきた。後日、太郎にこのキャスティングについて説明を求めたところ。「遺憾に思う」と返答があった。



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