ひえコラム 5

自動販売機について


先日、過度にアルコールを摂取し、簡単に言うと飲み過ぎて、朝になっても抜けておらず、自宅近くの自販機で血中のアルコールをとばそうと100円玉を2枚投入し、150円の500mlペットタイプのポカリスエットを買った。
なぜかお釣が10円玉で出てきた。
それが不幸の始まりだった。更に食物繊維がたっぷりと6gも入ったのファイブミニも目にとまり、そういえば2,3日糞してないな・・・と思い出し、この際、アルコールと一緒に糞も出すべとポカリのお釣10円玉5枚を投入した。
すると何度投入しても返却される1枚があった。軽く5回はくりかえした、しかしである、てめえが吐き出した10円玉を拒み続けるのである。
私が成人した大人だからよかったが、この不条理が成長過程の小学生の身に降りかかったらと考えるとゾッとした。
きっとその子は非行に走るか、自ら命を絶つであろう。まぁ小学生が酒が抜けないからとポカリを買うことはないとおもうが・・・
このまま、立ち去ることも出来たが、私は続けた。くりかえしくりかえし10円玉を投入し続けた。結果は同じだった。しかし、私は続けた。
次第に通行人は不審な目で私を一瞥し、散歩中の犬には吠えられ、カラスは電線に止まって戦況を見守りはじめた。 確かに、わたしのポケットには小銭がある。その小銭で買うことは容易い、正義感でも使命感でもない。この宿命に背を向けることが出来ないだけである。わたしは続けた。
あいかわらず通行人は不審な目で私を一瞥し、散歩中の犬はいまにも飛びかかろうとし、カラスは仲間を呼びはじめた。
気付づくと、後ろに小学生の男の子がいた。「まだ?」不意のタメ口にたじろいだ。
無礼な奴だ。ビンタでもかまそうかとも考えたが、そうだ、こいつに続きをやらせよう。
よからぬことが頭に浮かんだ。
そして、事の経緯を説明し、男の子は快くこの大役を引き受けてくれた。
馬鹿な奴だ。
「いいか、途中で止めたり、投げ出したりすることは出来ないぞ」
男の子は再びタメ口で「わかったよ」と言い捨てた。
戦いは終わった。一発だった!あれほど苦戦した私は何だったのか?
そうだ、もしかするとあの10円玉は汚れのない者にしか使えないのかもしれない。いや、違う、きっと汚れた者にしか使えないのだろう。そうすれば、話が完結する。
この戦いで既に昨日の酒は抜けていた。そして用のなくなったポカリを男の子にあげた。
「ありがとな」お礼もタメ口だった。



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